鐵版神数放浪記【入境編】
鐵版神数(てっぱんしんすう)と筆者が出会ったのは今から三十年も前のことで、台湾の当時出版されていた朱雲山氏の『鐡版神数心得』でした。今はもう閉店してしまった台北の重慶南路の集文書局の故黄社長が朱雲山氏を紹介してくれて通訳もしてくれたのです。実際に朱雲山に占ってもらったのですが、それは「皇極神数」というもので「鐡版神数」ではなかったのです。鑑定料は4000元(当時日本円が一元五円の時代でしたので二萬円かかりました)、「あなたの生まれた日が己巳ですからここの條文はあなたのことが書いてあります。」と指で指された数列の下に書かれていた文章をノートにメモしたのですが、これといった印象もなく、この程度の占いなのか?とその時はがっかりしました。いつか解読したいと思いつつ、その肝心なノートも無くしてしまったようで今は手元にありません。更に女性関係を占うと全部で一萬元の費用がかかるというのでそれは断念しました。もう一人筆者自身で尋ねた故梁湘潤先生は、鐡版神数の研究書を数冊出版していたので逢いに行ったのですが、彼は不在で彼の母と日本人の妻と出会ったのでした。筆者はなぜか鐡版神数の師匠に恵まれることはなく、故張明澄先生が紹介してくれた張先生の台湾のお弟子さんが出版した周進諒氏の『神機妙算鐡板神数』の本を読んでもこれといった核心を得た内容が書かれていませんでした。それから台湾に行くたびに筆者の書斎に無意味な鐡版数の蔵書がすでに数十冊を越えていたのです。上海図書館に占いの原典の調査に行ったとき、原典の「鐡版数」「皇極数」「皇極分経数」「蠢子数」と出会い、いつかこのテキストを解読してみたいという衝動に駆られていたのですが、たまたま今年のゴールデンウイークの後に台湾に出かけたところ筆者の運命的な出会いともいえる前から気になっていた鐡版神数の書籍を探しに行ったのでした。○○の『鐡板神数○○(1985年12月7日)』と原典の『神機妙算鐡版数(香港上海印書館)』は上海錦章圖書局印行のテキストが再版されたものでした。なんとこの本の占い方法が原典の起例歌訣の解釈がもっとも納得がいったのでした。驚くべきことにこの書は筆者が台湾を訪ねた以前既に書かれていたものでした。その書に鐡版神数の書かれた本で年月を先天卦として六親を考察し、日時は後天卦で運勢を見ていくというこのような占い方をするのは誤りだ、つまり一般の鐡版神数の書籍に書かれている占い方法が既に批判されていたのでした。
鐡版神数は、乾坤の二集に分かれており、乾集はオールロジック、つまり普遍的に運命を求める方法が説かれており、坤集はローカルロジックの個人的な運命を類推する方法が説かれていて、この二つのロジックで占うことで今我々が生きている縦のラインと横のラインとを交差させて正に我々の苦悩に満ちたリアルな現実を占って開示しようとしております。
鐡版神数の乾集の冒頭には、次のようなことがかかれています。
蓋聞人禀天地、命為陰陽、即旦夕吉凶、各有定数。況終身禍福豈無以定之。然命之理、微變化無窮、若差毫厘必謬千里。住住有八字相同而貧富各異、皆因未識真刻分耳。唯前賢諸夫子秘伝理数、従本人父母身八字、配合五音八卦、毎一時須推八刻、毎一刻之推十五分、推到的準時刻、自然全数悉合、禍福吉凶、絲毫不爽、彼造福損徳者、未可同日而語也。
八卦加則例
爻従三十起、乾卦六為頭、
兌為後少女、双中一網収。
變知六八止、世應兩同儔 。
遇十不須用、玄玄妙法周、
当看多寡数、及止悉因由。
天干配卦例
壬甲従乾数、乙癸向坤求。
庚來震上立、辛在巽方留。
己以離門起、戊用坎為頭。
丙須艮處出、丁向兌家収。
地支配卦例
一数坎矣二数坤、三震四巽数中分。
五寄中宮六是乾、七兌八艮九離門。
日主配卦例
亥子坎宮寅震木、巳午離門丑在坤。
卯酉乾金辰是兌、未中艮木戌巽直。
河洛配卦例
甲己子午九、
乙庚丑未八、
丙辛寅申七、
丁壬卯酉六、
戊癸辰戌五、
巳亥単四数。
地支取数例
亥子一六水、
寅卯三八真、
巳午二七火。
申酉四九金、
中宮辰戌是、
丑未五同帰。
以上の冒頭文と起例歌訣が書かれており、凡そ六種類の條文を求めるいわば演算公式(六種の變卦取数法)から一つの方法で各八條の全部で48條の條文を求めて行き、その條文に対応する字典のように表記されている1001~13000條の例を挙げると次のように表記されています。
1001 四十七 一樹殘花、有枝復茂。
……
13000 萬象更新、周而復始。
全部で一萬二千條の條文集によって鐡版神数は、すべての人の運命を説き明かそうと試みたのではないでしょうか。占う当人の富貴貧賤、成敗壽夭を明らかにしているだけではなく、数え年が書かれているものはその年に起こる現象、つまり運勢を見ることができます。その條文には本人のみならず当人の両親や兄弟や妻子といった家族構成や各々の家族状態をも論及しております。
その六種類の演算公式は、次の六種類です。
八卦加則取数(八條)
定刻取数(八條)
四柱天干取数(八條)
大運取数(八條)
日主變卦取数(八條)
前後變卦取数(八條)
以上の演算公式は、八字の干支を易卦に変換して数條を求めたり、四柱の八字の構成そのものから数條を求めたり、定刻取数といわれる生まれた時の120分間を更に15分単位の八刻に分けた全部で96刻の固定した條文から求める方法があり、この定刻取数は生まれた時分を重要視したもので、同じような八字の命式でも更に八通りの運命を導き出すことができます。一般の鐡版数の原典のテキストではこの定刻取数は割愛されております。『神機妙算鐡版数』のテキストは民國三年の上海錦章図書局印行のテキストが現在でも出版されています。このテキストの母体となったのは清朝道光年代の刻印本や上海埽葉山房石印版が前衛になっております。この鐡版神数としてまとまる以前に「皇極神数」「蠢子数」「皇極数」「皇極分経数」といった数術の書が現在にも伝わっております。
論より証拠、実際に筆者自身の命式を鐡版神数の演算公式によって求められた條文をみていきましょう。
筆者の八字は、
年 辛丑
月 丁酉
日 己巳
時 乙丑
で午前一時三十分ごろに長野県飯山市の実家で生まれていますので、地方時間の十四分を考慮すると丑時の三刻に当たるようです。現在は数え年58歳になりますが、今年はそれに該当する條文がありませんでした。
八卦加則取数
4388 好徳兼好善、修身又齊家。
4242 五十五 五十六 避嫌思退、不堕猜疑。(注筆者、的中)
7474 五十四 否極終成泰、蹇後運還通。(注筆者、的中)
2649 初授知懸、必有變遷。
9381 莫道春花好、風雨又相催。
4545 命入文昌、有學堂之分。
2628 三子生年属金、四子生属木。
3342 数有六子、送老難齊。
定刻取数 丑時三刻
5993 甲辰拝師、方合此刻。
6089 東西任處之、宇宙何其寛。
6185 一品當朝、聲揚四海盡知名。
6281 歴盡幾年奇學術、不如終作一星巫。(注筆者、的中)
6377 雖是一品之元老、原是蓮華座上仙。
5897 鬼怪出相侵、凡事三思休可疑。
5801
5705 職居固山、一旗之主。
5609 九九之年数已、窮幽冥魂魄已入泉中。
四柱天干取数
7869 九十三 九十四 臨風回首、攬巒三嘆。
7865 三十三 春光暖日、復饒物色。
8061 兄弟三人、数當盡貴。(注筆者、的中)
8157 四十三 四十四 方覚岩前飛快馬千層浪裡駕孤舟。
8253 花外鶯聲巧、春風草色新。
8349 人生繾綣有何用、不若劉郎中浴醉郷。(注筆者、的中)
8445 十一 十二 韶光明媚、人在錦叢中。
8541 以庠而貢、数由前定。
大運取数、流年取数
3461 危橋渡過又高山、頼過拄杖得往還。
8446 五十七 可把陰功祈善保、怨字無心一在頭。(注筆者、的中)
9446 秋風露滴迎花月、孤雁湘江任去來。
7446 三十三 雲暗月明、花開雨晴。
3458
9458 数注其人、住居香花僧院。(注筆者、的中)
3451 剛柔能将相、未遇且収蔵。
日主變卦取数
9477 辛酉之科、宴飲鷹揚。
9573
9669 二十五 二十六 顛沛流離、窮愁自苦。(注筆者、的中)
9765 二十七 蝴蝶叢生、慶雲顛倒。(注筆者、的中)
9285 七十九 八十 数該生子。
9189 兄在東時弟在西、一雙鴻雁兩分飛。(注筆者、的中)
9093
8999 高雲錦帳誠堪羨、冷落青毡不用憂。
前後變卦取数
7386 十三 子規不隠聲、聲啼出傷好傷心。
7482 五十九 寒氣将回先報喜、雪餘發歓笑賞紅梅。
7578 三十一 三十二 父死之年、昊天罔極。
7674 姻縁長短皆前定、月缺花殘数不饒。(注筆者、的中)
7770 九十九 百歳欠一春、含笑入黄泉。
8387 四十九 五十 民歌陶舞樂堯天。(注筆者、的中)
8291 慈航普濟、早證菩提。(注筆者、的中)
8195 不従文武試中出、命有総督一品官。
8099 土年便要離郷井。(注筆者、的中)
8003 二十二 閨中順利樂忘憂、春日凝粧上翠楼。
以上の條文を読んで行って個人的に感じたことは、兄弟との関係が非常にリアルに映し出されています。自分の職業のことや自分の社会的なステージと女性関係に関しては非常に当たっていると思いました。しかし父母や妻子に関する事項が全く該当していませんでした。しかし現在の状況から見るとこれも当たっても遠からずといえるでしょう。寿命についても九九歳までの條文が二つも重複して計算されています。そして現在どうなっているかを知ることが最も重要であり、それをどのように見ていくべきか、今起きている現象を見事に言い当てることが重要なポイントだと思いました。特に最後の前後變卦取数の方法で筆者の関係者を占って見たのですが、まさに神機妙算というべきでした。ある人は今起きている良い縁談についての重要事項が三つの條文で非常にリアルに暗示されておりました。また同じ條文が重なっている生まれの人とは深い縁で結ばれているようです。その縁談を見事に的中させたのは次の三つの條文でした。
7381 二十七 二十八 柳眉花明、賞心樂事。(本年数え28歳)
7669 二十九 三十 助良人之才、納閨中之福。(来年結婚予定)
7765 借問一生身外事、遇猪之年是帰期。(来年の亥の年が重要な年になる)
彼女の子平真数や紫薇や七政の命盤で見ても結婚は今年ではなく、来年を指しておりました。
鐡版神数の応用編の坤集の見方で筆者のローカルロジックを計算したところ筆者の友人が去年突然亡くなってしまったのですが、次のように予言されておりました。
9547 五十七 良人先去世、獨自守黄昏。
鐡版神数の坤集の六親の生年による條文を求める方法では、父と母や夫と妻や妻子の生年干支やまたは人生で起きた重大な事項の年によって当人に与える運命的な影響を見ていくもので、同じ八字の人でも家族構成がまったく違っている人には有効な見方ではないでしょうか。つまり鐡版神数は、子平真数(子平推命)の限界を乗り越えようとして新たに組織された運命学体系であり、すべての命術のエッセンスを網羅した中国王朝最後の占いであったともいえます。
このような現象は、筆者自身が自分の運命に真に向き合ったことで鐡版神数は以上のことを開示してくれたのではないでしょうか。大切なことは、当人が真摯な気持ちで素直に運命を受け入れる段階に立った時、天も素直に啓示してくれたのではないでしょうか。ここで出された條文を単に鵜呑みにするのではなく、これらの情報が自分の人生の大事であったり、前世についての事が書かれてあったりするので、これらを参考に自分の運命の如何を再構築すべきではないでしょうか。人間はもっと自分の未知なる内面に向き合うべきで、一般に出回っている九星気学や四柱推命や算命術などの、つまり単なる小説のような読み物で済まされるような運命判断で出された答えで自分の運命を狭く区切ってはならないと感じました。鐡版神数のように人の運命を百歳のレベルで、見通してから人生の重要事項を圧縮し、凝縮した形で各要素を検索できる運命学は、この鐡版神数がもっとも得意とする分野であり、運命の正にまだ開かれていない未知なる可能性を自ら推し開いて豊かで幸せな人生を歩んでもらいたものです。
残念ながらこの鐡版神数は、あの文化大革命の嵐の中で粛清されてしまった占いで、戌から亥のつまり、12000條の戌亥の二千の條文が欠落しながらも苦難の時期を乗り越えて今この筆者に託された占いであると筆者も真摯に受け止めようしております。占いは、特に中国の師弟関係において伝承されている占いに関しては、誰か氏であれ敬意を払う必要性が求められます。それに敬意を払わない人のところにはその占いは降りてこないとさえ言われています。鐡版神数を習得するときにまずぶつかる壁は、計算方法が複雑で計算を間違えたら條文が的中しません。干支を数に変換するときも易卦を間違えたことでヒットしない場合もありました。挙句の果ては、せっかく計算が合いながらも見ている條文の段落の位置を間違えてもヒットしませんでした。まさに何重もの占いプロテクトを外してやっと占いがヒットしていくようです。鐡版神数に限らずこのような中国伝統的な占いを解読し、マスターするには多くの占術体験が必要であるようです。
筆者のホームページではこの鐡版神数に興味を持たれた方を鑑定する特別企画も催しておりますので奮ってご申し込みくださいませ! 反響が大きければ鐡版神数の秘伝伝授講習も企画しております。
2018年 7月吉日 阿藤 大昇
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- 運命を知る重要性
- 『子平淵源』が800年ぶりに復刻されました。日本にこの四柱の子平推命は伝来されていませんでした。宋代の木版本は韓国に現存しますが、その写本が日本にありましたが、誰もその原典を見い出して原典を邦訳や活字に直して世の中に今までこの重大な真実を知ろうともしなかった日本の占術會の著名な先生方はいったい何を元に研究し、どんな四柱推命を作ったのか遺憾です
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2018年7月10日 (火)
鐵版神数放浪記
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